物流ウイークリー

先代の意思受け継ぐ 他社にできないことを特車で

 特殊輸送のノウハウを強みとする大森運送(大森栄作社長、広島県呉市)。同社はこれまでも様々な車両で顧客の要望に応えてきたが、これほど新たにラインナップに加わったポールトレーラーが注目を集めている。今年7月に亡くなった先代の大森才喜会長の車両に込めた思いや、同社の強みなどについて、取締役関西統括本部長の森幸弘氏に話を聞いた。

 新車両は、新潟県から新幹線の型材(約25m)を輸送するため、先代の大森才喜会長が設計図を一から作った思い入れの強い車両。昨年の秋から制作が始まり、今年6月に完成した。しかし、残念ながら、大森才喜会長はポールトレーラーが走る姿を生きて見守ることができなかった。森本部長は「7月から運行を開始しているが、車両について各地で質問される機会が多い。少しずつ実績を積み重ねていくことができれば」と話す。
新車両の特長は、長さがありながらも荷台の伸縮をドライバー1人で簡単に行えることだ。通常、25m程度の荷台の操作では吊り上げるなどの作業が必要なため、4、5人での作業となるが、新書量は荷台の伸縮に特別な力が不要なので、ドライバーに優しい仕組みになっている。また、荷物を積載していないときには車両全長が縮むため、高速道路を走行でき、ドライバーの労働時間短縮にもつながる。「こんな仕組みの車両は珍しい」と荷主企業も太鼓判を押し、現在特許申請中だ。「運べる会社が少ない荷物を、弊社では進んで受ける。走行させる度に、荷台が伸縮することのありがたさを実感している」

 同社では全国でも珍しい40tや28.5t車の中低床トレーラーなどを取りそろえ、全車両がエアサスペンションを搭載し、精密機械の輸送にも対応。エアサス車両は空車から積車まで、常に最適なサスペンション効果を得られるように荷台コントロールすることで、荷台への振動を効果的に吸収し、片荷でも車両姿勢を一定に保持するので、荷崩れを大幅に低減できる。最近ではスカニア社のトレーラも増車。乗務するドライバーは、特殊輸送を熟知したベテランで車両に詳しく、何よりも安全運転ができるドライバーが担当している。

 今後も、特殊車両での先代の遺志を受け継ぎたいと話す森本部長。「特車にこだわりを持っていた先代の会長は、時代の先を見据え『他社がしないことをやる』」ことに長けていた。『新しいこの車両が必ずわが社の強みになる』という言葉を胸に、弊社でしかできない仕事を今後も続けていく。企業理念である『お客様に喜んでもらえる当社独自のノウハウを惜しみなく提供する』ことができたら」と話した。  (木村麻理奈) 

 

物流weekly2020-10月5日号
2020年10月05日